何だか東京オリンピックが無事に開催できるのかあやしくなってきました。東京に決まった以上、成功してほしいですし、きちんと開催・運営する責任があります。ただもともと東京都民のオリンピックに対する熱意はあまり高くないので、東京出身の友人達(特に女性)は新国立競技場問題がこれだけ大きくなってきたのを見て、「やっぱりオリンピックなんていらなかったのよ。」と言い出しています。特に東日本大震災後は「被災地でやればよい。」、「首都直下型地震が来るかもしれないからやめた方がよい。」、「福島の原発が心配だから責任が持てない。」という意見が多々聞こえました。だから安倍総理が原発汚染水について「アンダー・コントロール」(制御できている)と世界に向かって発信した時には「そんな大ウソついちゃって大丈夫なの?」と思ったものです。そういう批判の声は「お・も・て・な・し」と盛り上がった祝賀ムードにかき消されていたのですが、ここにきて急に高まってきたように感じます。

 皆様、覚えていらっしゃいますか。石原都知事時代、オリンピック開催地に立候補してリオ・デジャネイロに敗れたのは、東京都民の支持率が低かったことが要因の一つとされました。確かに都民の間では盛り上がっていなかったし、「日本でやるのは構わないけど東京じゃなくていいんじゃない?」、「これ以上混んだら嫌よね。」、「築地市場の移転とか湾岸開発の理由に使うだけじゃないの?」というのが私の友人達の反応でした。お台場で開催予定だった世界都市博覧会の中止を掲げて青島幸男都知事が誕生したのが1995年、東京が再開発の理由として大型イベントを招致しようとするのは今に始まったことではなく、それに対する都民の冷めた視線は常にあったのです。

 私は最近、2007年の都知事選に立候補した建築家の黒川紀章さんをよく思い出します。直接面識があったわけではありません。ただあの時、東京オリンピック招致や築地市場の豊洲移転に反対する公約を掲げていたこと、特に安藤忠雄さんの名前を挙げていたことが記憶の中に蘇ってきたのです。石原都知事(当時)と安藤さんが一体となって東京オリンピック招致を進めていたことは今や明らかであり、一方ダイオキシンが検出された豊洲に築地市場を移転させることには食の安全の観点から根強い反対がありました。オリンピックに乗じて豊洲を大規模開発しようとしている石原・安藤チームに対して、他の都市で開催すべきだと一石を投じた黒川さんは今、天上から何を思って東京を見つめているでしょうか。当時、黒川さんに対して安藤さんへの嫉妬だと揶揄する声もありましたが、現在進行形の滅茶苦茶な計画が明らかになり、改めて黒川さんは予見していたのではないかと思ってしまうのです。実際、著名な建築家で都知事になる必要などなかった人ですから、東京オリンピック招致計画に物申そうと立候補したようなものでしょう。その年の秋に亡くなってしまった黒川さんが最後に伝えようとしていたことなのではないか、と改めて当時のことを思い出すのです。ご健在だったら今頃、建築家の先頭に立ってバンバン発言されているでしょうね。

 さて石原さんは「安藤さんは悪くない。東京が新税を導入すればよい。」と発言したようですが、こんなことを受け入れられるはずがありません。もともと大規模開発に厳しい目がある中でのオリンピックであり、舛添知事は都民の空気が読めているからこそ500億円の要求に簡単に乗るわけにはいかないのです。「オリンピックが決まってしまったのだから仕方ない。」、「それにしてもあんな大きな施設は神宮外苑にいらない。」と思っているところに今回の杜撰な計画が明らかになったのです。都民が納得するわけがありません。どう考えても現行案は無理でしょう。2,520億円というのはEUを揺るがしているギリシャ一国の債務(2,180億円)より大きく、スカイツリーに換算すると4つ分なんて馬鹿げています。後付けの屋根や維持管理費でさらにコストが膨らむなんてとんでもない!八岐大蛇みたいに頭が何人も出てきて責任転嫁している場合ではありません。追及や検証は後にして収拾をつけないと日本は世界の笑い物です。おそらく国民の大多数はわかっているのに政府と一部関係者だけがズレているのです。

 最後に解体されてしまった国立競技場は「聖地」として都民から愛された場所でした。神宮球場があってその横に国立競技場…別に屋根なんかなくてもオープンスペースでいいのです。国際イベントを招致するのに観客席が足りないことは知っていました。だから日韓ワールドカップの時、決勝戦の会場に使えなくて横浜スタジアムになったのです。(私はワールドカップの時の通訳です。)国立競技場を改修してもよかったのに簡単に壊しすぎた、という声は私だけでなく周囲からも聞こえてきます。国立競技場は何の為に壊されたのかと思うと虚しくなります。

2014年5月31日(土)ライトアップされた国立競技場の美しい芝2014年5月31日(土)こんな光景見たことないです…。2014年5月31日(土)気持ちいい〜!驚異の芝でした。
 実は去年、SAYONARA国立競技場FINALのイベントに参加していました。東京のシンボルが一つ消えるにあたり最後を見届けようと思ったのです。初めて芝まで降りることを許されて皆が芝に寝転がった光景、人で溢れ返った国立のピッチを私は忘れられません。その時のチケットはFUTURE TICKETとして新国立競技場のスタジアムツアーに有効なのですが、一体どんなスタジアムになるのかといよいよ心配になってきました。皆様に国立競技場最終日の写真を公開して終わりたいと思います。