今年7月に開催される世界遺産委員会において、世界自然遺産登録を目指している小笠原諸島を参議院環境委員会のメンバーで視察しました。

1月19日(水)
2011年1月19日(水)海上自衛隊飛行艇US−2
 早朝、超党派の派遣議員6名と随行者数名とともに参議院議員会館を出発し、まずはマイクロバスで厚木基地へ。通常、小笠原諸島へは東京竹芝桟橋から「おがさわら丸」に乗船し、約26時間で到着しますが、この場合、船の運航スケジュールの都合上、6連休が取れないと往復できません。さすがにそんな日程は無理なので、私達は厚木基地から海上自衛隊の飛行艇US−2で現地に向かいました。もちろん厚木基地も飛行艇も初めて…。まさか環境委員会に入って自衛隊の飛行艇に乗るとは思いませんでした。飛行艇の座席は前向きが少なく、バスのように窓に背を向けて横向きに座ります。議員席は前向きでしたがシートベルトはジェットコースターのように仰々しく、首から認識票をかけると「いざ出陣」という気分になります。この飛行艇は洋上救難などを任務としており、救助隊員も同乗していて、これ以上安全な乗り物はないはずですが、やっぱり緊張!犬の鑑札みたいな、この認識票が不安を煽るのでしょう。

 さて、プロペラの音がして離陸するとあっという間に高度が上がりました。すぐに雲の上に出て、そこからは普通の飛行機のよう…。シートベルトも解除して、ようやく楽しくなってきました。3時間ほど飛行して父島の二見湾に着水、バシャーンと水しぶきが上がります。今度はプロペラで船のように岸まで推進し、次にウィーンと車輪が出たと思ったら父島基地に乗り上げて到着。何とも便利な乗り物です。副村長他、10数名が横断幕とレイ(首飾り)を手に出迎えてくださいました。

 まずは徒歩ですぐ近くの小笠原ビジターセンターへ。ここでお弁当を食べながら小笠原諸島の歴史、世界自然遺産登録に向けた取り組み等について説明を受けました。小笠原諸島というとホエールウォッチングなど「海」を連想するかと思いますが、世界遺産としての価値は海にあるのではなく、「地形・地質」、「生態系」、「生物多様性」の3つがセールスポイントです。

 小笠原諸島は海洋プレート同士がぶつかり合い、沈み込みから現在までの地質的な成長過程を陸上で見ることができる世界で唯一の場所であり、ボニナイト(海洋プレートの沈み込みが始まって間もない時期にのみ発生する特殊な岩)の露出規模が世界最大です。また大陸と一度も陸続きになったことがない為、生物が固有種へと進化を遂げた「生態系」の見本が数多く生息しています。特にカタマイマイ(かたつむり)は多くの種に分化し、特徴的です。その他、鳥類のオガサワラオオコウモリ、昆虫のシマアカネ(トンボ)、植物のシマザクラなど、数多くの希少種が見られる「生物多様性」を誇っています。

 そこで日本政府は平成15年5月、小笠原諸島を世界自然遺産の候補地に選定しました。世界自然遺産に登録される為には「自然景観」、「地形・地質」、「生態系」、「生物多様性」の4つの基準のうち、1つ以上に合致することが必要です。平成19年1月に世界遺産委員会事務局への暫定リストを提出し、その後、事務局に指摘された外来種対策に力を入れ、平成22年1月に推薦書・管理計画を提出しました。昨年夏に国際自然保護連合による現地調査があり、いよいよ今年7月に審査が行われるのです。

 以上の説明を聞いた後、私達は長崎展望台→東平→中央山→奥村→ノネコ一時収容施設→扇浦の順に島内を視察しました。

2011年1月19日(水)長崎展望台からの風景2011年1月19日(水)サンクチュアリの遊歩道2011年1月19日(水)たこ足のような鮹の木2011年1月19日(水)中央山山頂にて。2011年1月19日(水)外来種ノネコとノヤギの侵入防止柵2011年1月19日(水)ノネコ一時収容施設の看板
 長崎展望台と中央山からは父島の地形を把握することができます。遊歩道に生息する固有の植物、また外来種のアカギなど、環境省の現地スタッフに教えてもらいながら歩きました。東平には森林生態系保護地域(サンクチュアリ)があり、かなり広い地域ですが、入口に近いところを少し歩いて動植物の説明を受けました。ノネコ(人間が持ち込んで野生化した野良猫)による固有種の捕食(例えばアカガシラカラスバト)が深刻なので、ノネコを捕まえて島外に出すという活動が続けられており、地元のボランティアの方々から説明を受けました。ノネコは「駆除する」と言うと反対者がいるけれども、捕獲して島外に出し、里親を捜しましょうということなら誰もが賛成できるので、期間限定で全部捕獲するつもりで取り組んでいます。実際、雄雌が1組でも残ったら増殖してしまうので、意味がないそうです。東京都獣医協会がノネコを本土で一時収容し、現在300匹もの里親捜しを実施しています。(猫好きの方、ご協力ください。)父島のノネコ一時収容施設(NPO法人小笠原自然文化研究所)は港の桟橋近くにありました。

2011年1月19日(水)大口開けるグリーンアノール
 そして桟橋近くの奥村というところでは、外来種のグリーンアノール(緑色のトカゲ)の駆除について説明を受けました。グリーンアノールはオガサワラシジミ(蝶々)やトンボ類、オガサワラゼミなどの希少種を捕食しています。このグリーンアノールの完全駆除は困難なので、小笠原の玄関口である父島から母島などにこれ以上拡散しないように桟橋近くで捕獲しているのだそうです。原理としてはゴキブリホイホイやねずみ捕りと同じで、通り道に粘着テープの付いた箱を設置し、捕獲したグリーンアノールは安楽死(凍死)させるそうです。低温動物なので冬場はあまり見かけないそうで、前日に捕獲した1匹を見せてもらいました。島内にはグリーンアノールが進入できないようフェンスで囲った保護区もあります。

 最後にオガサワオオコウモリが生息する扇浦に移動し、農業試験の説明を聞きながら暗くなるのを待ちました。ビニールハウスの電灯を消したら、ようやくバサバサと飛び回るコウモリを発見。なかなか大きいのです。

 これで1日目の行程は終了し、夜は地元の方々との懇親会に参加しました。

1月20日(木)
2011年1月20日(木)船上の私と川口順子先生2011年1月20日(木)進行方向の景色2011年1月20日(木)南島2011年1月20日(木)千尋岩(ハートロック)2011年1月20日(木)断崖に露出するボニナイト2011年1月20日(木)兄島海域公園の美しい海
 1日目は陸から、2日目は海から視察するというのが今回の行程。天候にも恵まれ、とびうお桟橋からパパヤという会社の船に乗っていざ出航。二見港の出口までは風が強くて大揺れでした。空港候補地の州崎を通り過ぎ、父島南部地質を見る為に南下します。途中、石灰岩地帯のジョンビーチ、南島に面したジニービーチ、そして断崖絶壁の千尋岩(別名ハートロック)を見てUターン。ボニナイトもはっきりと確認できました。ザトウクジラも数頭現れ、尾びれが見えたり、丸い背中が見えたり…大満足です。北上して兄島海域公園まで行き、またUターン。3時間ほどの視察を終えて、とびうお桟橋に戻りました。

2011年1月20日(木)東京ラムボンボン
 全員船酔いもなく元気でしたが、3時間風に吹かれっぱなし、時には船も揺れるわけで、この視察は体力がないと大変だと思います。一度ホテルに戻って休憩し、町に出て昼食と買い物。小笠原諸島はパッションフルーツ、島唐辛子、ラム酒、パッションリキュール、ギョサン(業界向けの漁業サンダルがお洒落になり、履き心地のよいビーチサンダルとして人気上昇中)などが名産品です。それから洋菓子のモロゾフが小笠原のラム酒を使ってチョコレートボンボンを作り、東京ラムボンボンと称して東京駅の地下街で発売中。これは今のところ小笠原諸島では購入できません。副村長からいただいた東京ラムボンボンを試食しました。ラム酒をたっぷり閉じ込めてあって、チョコを噛んだ途端にラム酒が飛び出してきます。今月14日(月)はバレンタインデー。どうぞ東京駅にお出かけください。

 村役場から海上自衛隊父島基地に移動し、US−2に再び搭乗。今度は基地から二見湾に乗り入れ、湾の出口に向かって海上をしばらく進んでから離水します。父島上空を旋回してから厚木基地に向かいました。厚木基地に到着した時はすっかり夜景になり、バスで参議院議員会館に戻ったのは午後7時半頃でした。かなり充実した内容の委員会視察でした。