4月3日(土)に日本を出発し、日本人宇宙飛行士、山崎直子さんが搭乗したスペースシャトル「ディスカバリー」の打ち上げに立ち会いました。

4月3日(土)
2010年4月3日(土)ボールデンNASA長官
 ワシントンで乗り継いでフロリダ州オーランド国際空港に同日到着、ここから車で1時間弱走ってココビーチという大西洋岸の町のホテルにチェックイン。日本を出てから24時間経っています。遠い!!しばらく休憩し、夜はJAXA主催のレセプションに出席して乾杯の発声をしました。この日、気になったことはボールデンNASA長官のスピーチ…「今日は日本の議会からも参加されているようですが、HTV技術を更に発展させて日本が有人飛行に取り組むことを期待しています。」という発言があり、議会関係者は私1人なので焦りました。一応、乾杯の挨拶の時に「HTV技術の向上に取り組みます。」と返しておきました。これがいきなり出てきた話なのか、そんなことを突然みんなの前で言うものなのか、JAXAや文部科学省の担当者に聞いてみたら、どうやら最近ボールデン長官はこの発言を繰り返しているようなのです。

 どういう意味なのかご説明しましょう。今、日本の野口聡一宇宙飛行士がロシアのソユーズでISS(国際宇宙ステーション)に行って長期滞在しています。というのもアメリカのスペースシャトルは山崎直子さんの飛行後、残り3回の打ち上げをもって今年度中に引退するので、今後はロシアのソユーズしか有人飛行の手段がないのです。本来はコンステレーション計画による次世代ロケットにスムーズに引き継がれる予定でしたが、開発は到底間に合わず、スペースシャトルの引退と宇宙ステーションの継続使用だけが現実問題として迫ってきています。宇宙開発分野で世界をリードしてきたアメリカに有人ロケットがない、これからアメリカの宇宙飛行士をISSに送るのに毎回ロシアに頼むのだとしたら、いくら冷戦後だといってもアメリカのプライドが傷付くのではないか…と私は思います。3人しか乗れないソユーズにアメリカ人を搭乗させてもらい、さらに実験用機材や食糧も一緒に乗せてくださいとは言いにくいだろうな…と推察していたら、そこに救世主のように現れたのが日本のHTV(補給機)。昨年9月に実証機が完璧な打ち上げとISSへのドッキング、離脱まで全ての過程で成功したのです。この時、NASAからは20人ほど打ち上げ視察に来日し、HTVに大変な関心を寄せていました。(その他の活動報告参照)

 JAXAによるとNASAは初め、HTVの開発計画を相手にしなかったそうです。人間が常時滞在するISSにドッキングする宇宙船は有人が当たり前であって、無人の宇宙船がフラフラ近づいて激突したらどうするのだ、という理屈です。けれども日本はこの難しい技術を一度で成功させ、物資だけならHTVで補給できるようになりました。アメリカとしては、HTVに早く人も乗れるようにしてほしいということなのでしょう。今、もし日本に有人ロケットがあったら、アフガニスタンにアメリカが期待するような支援ができない分を科学技術で穴埋めできるのに…と思います。アメリカにとってはロシアより同盟国日本の方が頼みやすいはずです。やはり日本は軍事協力できない部分を科学技術で補完している国であり、それを武器として外交交渉で使うべきだと私は思います。

 HTV打ち上げ成功後、アメリカは今年2月にコンステレーション計画を中止し、先が読めない中でのNASA長官の発言でした。(私の帰国後、4月15日にオバマ大統領はNASAで宇宙政策について演説し、2030年代に火星に有人飛行するという目標とコンステレーション計画のうち、有人宇宙船「オリオン」だけを復活させました。それでも次世代ロケットの設計に2015年までかかるそうです。)NASAは次世代ロケットの完成までは民間ロケットに期待するなど他力本願になっているようです。

 レセプションの後はさすがに疲れてベッドに倒れこみました。

4月4日(日)
2010年4月4日(日)発射台のスペースシャトル2010年4月4日(日)ディスカバリー号2010年4月4日(日)こんな近くに行きました。
 専用バスでケネディ宇宙センターへ。初めに宇宙ステーション整備施設棟に向かいました。昨年、私が見学した時は「きぼう」のモジュールなど、施設内にもっと色々あったので、この1年でISSの組み立てが進み、完成に近づいたことがよくわかりました。この後、スペースシャトル発射台のすぐ横まで行くことができました。これは画期的!!普段はカバーがかかっていて見られないのですが、打ち上げの数時間前なのでカバーも外してあって絶好のシャッターチャンスでした。

2010年4月4日(日)アポロサターンVセンター内カフェの看板2010年4月4日(日)ドイツの宇宙飛行士と一緒に
 この後、アポロサターンVセンター(ケネディ宇宙センター内の見学者用展示施設)で昼食。ここにはカフェやギフトショップもあり、大勢の見学者で賑わっています。ドイツ人の宇宙飛行士が通りかかったので、記念写真をお願いしました。そして一度ホテルに戻り、休憩…深夜にバスで再出発です。

4月5日(月)
 午前2時頃、専用バスでケネディ宇宙センター内のビジターコンプレックスへ。5階のアストロノート・エンカウンター・シアターで今回のミッションの説明会やNASA長官による挨拶、日本側からは文部科学次官の挨拶がありました。(旧科学技術庁出身の次官は理系の留学経験者で英語も堪能です。)

2010年4月5日(月)バルコニーで打ち上げを待つ私
 ミッション説明会の後、ロビーに用意された朝食を食べ、早めにバルコニーに陣取りました。招待者しかいないので混雑はなく、場所取りの必要もないのですが、一生に一度のチャンスなので最前列で見ようとバルコニーの手すりに張り付いていました。昨年の若田光一さんの飛行の時とは打って変わって今回の打ち上げは不安要素がなく、順調にカウントダウンの数字だけが減っていきます。

 6時4分頃、上空をISSが通過しました。ISSは地上400kmの軌道を周回しており、肉眼で見えるとは聞いていましたが、初めて見て感動しました。星より大きな光る物体が後方から現れてゆっくりと遥か前方に消えていき、バルコニーから歓声が湧きました。本当に星とは違うので誰が見ても明らかです。

2010年4月5日(月)発射台のスペースシャトル2010年4月5日(月)上昇するスペースシャトル2010年4月5日(月)NASA伝統の打ち上げ祝い「コーンブレッドとベイクドビーンズ」ホットソースの瓶を手に
 そして6時21分、いよいよスペースシャトル「ディスカバリー」の打ち上げです。ISSにドッキングさせやすいようISSが通り過ぎて間もなく、つまり近くに打ち上げるのです。5、4、3、2、1…エンジンが点火され、フワっと浮き上がったと思ったら、エンジンの下から白い噴煙が巻き上がってとても幻想的…歓声が沸き起こります。私達が見ていた地点は射点から約5km離れており、音はまだ届きません。と思ったらドドドドド…バリバリバリバリバリ…というものすごい音を立ててロケットが思っていたよりゆっくりと真っすぐ上に上昇していきます。新幹線がすれ違う時のような風圧、震度1程度のバルコニーの揺れも感じました。やっぱり日本のH2ロケットとはスケールが違います。この日は雲がほとんどなかったので最後までよく見え、上空で旋回して水平飛行に入り、ISSと同じ方向に消えていくまで完璧に目で追うことができました。NASAの長官を初めとしてブリーフィングをした宇宙飛行士など、何人もの人が打上げの瞬間は特別だからシャッターを構えるな、ファインダー越しに見るな、写真ならNASAのホームページからダウンロードすればよいと言うので、忠告に従って私もしっかり肉眼で見ました。でも意外に長い間見えていて、打ち上がった後の雲の形が面白かったので1枚撮ってしまいました。まだ暗い中での打ち上げで本当に美しかった!!日本から飛んできた甲斐がありました。日本人が搭乗するスペースシャトルの打ち上げは今回が最終であり、私も事業仕分けの準備の合間に根性で渡米しましたが、本当に行ってよかったと思いました。去年は残念だったけれど再チャレンジ成功です。

クルーベア(CREW BEAR)
クルーベアのぬいぐるみ
 今回、一目惚れして購入したNASAグッズ「クルーベア」、ケネディ宇宙センターのギフトショップで発見しました。宇宙服を着たテディベアはさすがに初めて!事務所の一角に宇宙コーナーを作り、いつもそこにいます。オフィスのぬいぐるみはテンピー(地元の活動報告参照)に続いて2匹目です。